ミア・テイラー症候群

 

 

ミア・テイラー症候群を患っています。このネーミング風評被害が過ぎるだろ。

 

 

 

ミア・テイラー症候群とは、自己肯定感を満たすために年齢以上のことに手を付けようとする病です。この名前は、ミア・テイラーさんが飛び級をしていることを知った際の宮下愛さんの反応:「14歳?ヤバっ!?」に由来しています。相手からこのような反応を引き出して気持ちよくなりたいという思いがミア・テイラー症候群です。

 


みなさんが長年ADHDなどと付き合ってきたのと同様に、わたくしは長年ミア・テイラー症候群と付き合ってきています。

中学の時は思いっきり純文学志向の小説を書き、「この歳でこんな小説が書けるんだ、すごいなぁ」みたいな反応を密かに期待していました。実際に来たかどうかは別の話です。

高校の時はトポロジー、位相幾何周りの大学数学をやり、「もう大学数学やってるんだ、すご」みたいな反応を密かに期待していました。

暇な時はjstageなどで論文を読むことを趣味にしていました。英語読むのはかったるいので日本語のやつしか読んでませんでしたが。

この病は厄介なことに、次第に学術的興味と癒着していきます。最初は『「この歳でこれやってるの凄い!」と言われたい』程度のモチベーションだったのが、次第にその分野自体を好きになっていきます。大学数学を先取りしてイキっているTwitterの数学垢でもよく見られる現象です。

今は普通に学問として好きだけど、始めた当初のモチベーションの中にはミア・テイラー症候群があった、という人は決して少なくないと思います。

 

 

 

大学になって、純粋な知的好奇心から認知科学神経科学に興味を持つようになりました。基となる分野を勉強し始め、論文をちょびちょび読み始め、研究室の門を叩きました。

普通にそういった知的営みが楽しく、長年患っていたミア・テイラー症候群の事はすっかり頭から抜けていました。

 


そんなある日、というか今日です。

生命の普遍性研究ゼミとかいう主題科目で、Aセメの間研究室に配属されて研究ごっこをやることになりました。

研究ごっことは言え、ALESS以上学部の卒業研究以下くらいの結構本格的なものです。

手始めに本郷の方まで行って、今の興味や研究の方向性をすり合わせるミーティングをしました。

自分の興味の矛先とか、研究室が扱っている題材の範囲内でやりたいテーマとか色々駄弁っていると、途中でふらっと現れた院生が、

「B1!? B1でもう自由エネルギー原理とかそういうことやってるんだ、すっご!」

と宮下愛さんみたいなことを言ってきました。

それはもう爆裂に気持ちよくなりましたね、わたくし。

そして、ミア・テイラー症候群の症状がまだ残っていることに気付き、ちょっと嫌な気持ちにもなりました。言われてみれば、B1でモリモリ英語論文を読んでいる自分を眺めてニヤニヤしていた、というのは決して否定できるものではありません。

 


ただ、ミア・テイラー症候群の悪い点は、時間経過によって全部無駄になっていくことです。

中学生としては凝った小説を書いても、それ以上の年代としては普通の水準です。高校生が位相幾何をやっていても、大学生からすると普通に授業で習う内容です。B1が英語論文を日頃から読んだり力学系を学んだりしていても、B3、4、院生にとっては日常的にやっていることです。

ミア・テイラー症候群患者の営みはあくまでも『年齢の割に凄い』であって、それ以上でもそれ以下でもありません。悲しいね。

 


みなさんの中にはすっかりミア・テイラー症候群と学術的興味が癒着しきってしまった人もいるでしょう。そういったものを抱えながら生きていくのが一人前の研究者なのだと思います。(c.f. 中須かすみ 1期6話)

 

 

 

・長いので一行で

わたくしってミア・テイラーなんかなぁ